【最新】アート×ビジネスの企業事例7選を一気にご紹介|森ビル・三菱地所・JR東日本・西武鉄道・NEC・Adobe・BMW

2026.02.02
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いま、ビジネスとアートの距離が近づいている

ここ数年、「ビジネス×アート」というキーワードが、単なる流行語ではなく、都市開発や駅づくり、オフィス設計の実務に入り込み始めています。

企業がアートを導入する目的も、「装飾」のみという考え方から多様に変化を遂げています。

この記事では、森ビル・三菱地所・JR東日本・西武鉄道・NEC・Adobe・BMWという7つの企業を取り上げます。


森ビル|六本木ヒルズに「文化を核にした街」をつくる

六本木ヒルズに埋め込まれた美術館という発想

森美術館 アートをビジネスに活かしている事例の写真

まずは言わずと知れた森ビルのアート活用事例を。六本木ヒルズ森タワーの最上層にある森美術館は、展望施設や商業ゾーンと一体になって運営されている現代アートの美術館です。

森美術館 写真

美術館と同じフロアにある展望台、東京シティビューも人気

オフィス・レジデンス・商業・文化をワンセットでデザインした複合開発のなかに、最初から文化機能を組み込んだ点が特徴と言えます。

美術館での展覧会は、街全体に人を呼び込む大きな入口になっています。

週末に展覧会を見に訪れた人が、そのまま飲食やショッピングを楽しみ、街のなかで過ごす時間が自然に伸びていきます。

都市開発とアートを「同じテーブル」で設計する

森ビルの取り組みは、「ビルが建ったあとにアートを飾る」のではなく、都市開発の企画段階から文化施設を前提としている点がポイントです。

その結果、アートは単なる“おしゃれな付け足し”ではなく、「ここで働きたい・暮らしたい」と感じてもらうための理由のひとつとして機能しています。

新しいオフィス立地や再開発エリアを検討している企業にとって、アートは賃料や交通の利便性と同じくらい、「この街を選ぶ理由」をつくる要素になりつつあります。


三菱地所|丸の内を「歩ける屋外美術館」に変貌する

街路そのものを展示空間にするという選択

丸の内仲通が美術館に

丸の内仲通りを散歩すると、至る所にアートが出現する

「丸の内ストリートギャラリー」は、丸の内仲通り周辺の街路に彫刻を設置し続けてきたプロジェクトです。

オフィスビルのエントランスや広場ではなく、「通りの途中」に現代彫刻が立ち現れることで、通勤やランチの行き帰りにふと足を止めるきっかけが生まれています。

1970年代から今日まで、作品を入れ替えながら継続されていることも重要なポイントです。

彫刻の森美術館、都内のビジネスに活用されている

実は、一部の彫刻は箱根にある彫刻の森美術館が提供している

長い時間をかけて、「丸の内といえば街中に彫刻がある」という印象が、自然と蓄積されてきました。

日々の「行き来」を、街の価値に変える

丸の内エリアを重点的に開発している三菱地所は、街路のアートによって「歩きたくなる導線」をつくっています。

オフィスビルの中だけで完結させず、通り全体をゆるやかな屋外美術館と捉えることで、エリア全体の滞在時間と回遊性を高めています。

三沢厚彦の大人気シリーズの 《Animal 2017-01-B2》(2017年-2019年制作)が展示されていた時も

働く人にとっては、日々の通勤ルートが少しだけ豊かな時間になります。

この試みは「丸の内で働くこと」の魅力が増し、長期的な拠点選考にも影響していきます。長期を見据えた非常に戦略的な事例です。


JR東日本|山手線を「アートの輪」にする

駅を、移動だけではない場所にひらく

山手線 やまのてLINEミュージアム

JR田町駅で展開されたアート展示

JR東日本の「東京感動線」や「Yamanote Line Museum」は、山手線沿線の駅や高架下を舞台にしたアートプロジェクトです。

作品は駅構内やコンコースに設置され、通勤や乗り換えの合間に自然と目に入るように計画されています。

 

複数の駅をまたいで展開されるため、「この駅にも何かあるかもしれない」という期待が、沿線全体に広がります。

結果として、山手線そのものが「アートの輪」として認識されていきます。

サービスの差がつきにくい領域で「好き」をつくる

鉄道は、料金や所要時間だけを見ると、他社と差をつけにくいサービスです。

そこでJR東日本は、駅で過ごす時間そのものを魅力的な体験に変えることで、「選ばれる理由」を積み上げようとしています。

アートを通じて駅の印象が良くなると、沿線に住む・働くことへの愛着も育ちます。

「移動のためのインフラ」にとどまらず、「日常の風景をつくる存在」として評価されるための投資として、アートが位置づけられています。


西武鉄道|駅のホームを「地域ブランディング」に変える

日々目にするホームの壁を、街の入り口に

西武新宿線 航空公園駅|ARTIST unomori

池袋線 武蔵藤沢駅 | ARTIST OZ-髙橋 洋平

西武鉄道の「SEIBU BLUE ART STATION」では、ホームやコンコースの壁面に、その駅ごとのミューラルアートが描かれています。

通勤・通学で毎日見るホームの壁が、その街ならではの風景として、少しずつ記憶に残っていきます。

色やモチーフには、西武グループのコーポレートカラーや沿線の風景が取り入れられ、列車を待つ時間がわずかに柔らかくなります。

「なんとなくそのまま」だった壁が、地域の入り口としての役割を持つように変わっていきます。

「あの駅らしさ」が沿線価値をつくる

駅に固有のミューラルアートがあると、「どこにでもある駅」から、「あの絵のある駅」へと印象が変わります。

池袋線 武蔵藤沢駅 | ARTIST OZ-尾頭-山口佳祐

引っ越しや通学路の検討時に、「この駅前の雰囲気が好き」という感覚が、路線選択や居住選好にもつながっていきます。

制作プロセスで地域のリサーチや対話が行われることで、作品ができあがる前から、沿線住民との関係性が深まる副次的な効果も生まれます。

鉄道会社にとって、ミューラルアートは、沿線価値と地域との信頼関係を同時に育てる施策になっています。


NEC|社員と描くミューラルアートで、共創の場づくりをアップデート

壁画づくりを、社内対話のプログラムにする

大型プロジェクト オフィスアート

NECは、川崎市・玉川事業場の食堂兼共創空間に、社員有志とアーティストが一緒に描いた大きな壁画を導入しました。

「これからのNEC」をテーマに、ワークショップで出てきた言葉やイメージを、アーティストがビジュアルに翻訳し、それを社員が自らの手で塗り重ねていくプロセスです。

完成した壁画は、食堂としての機能以外にも会議やワークショップの背景として日々目に入り続けます。

NECの食堂のミューラルアートプロジェクト。田中紗樹が手がける。

単に新しい執務スペースを整えるのではなく、「自分たちで描いたオフィス」を持つことで、空間への愛着が生まれやすくなります。

「理念」を、共有できる風景として残す

NECのような歴史ある巨大企業では、理念やパーパスが文書として整備されている一方で、それを社員全員が実感を持って共有することが難しい場面もあります。

壁画づくりのようなプロジェクトは、言葉で書かれた理念を、社員自身の手で“風景”に変える取り組みとも言えます。

NECの事例は、ミューラルアートを通じて、共創文化や人的資本の考え方を日常に落とし込む一つの成功事例を示しています。


Adobe|ホームタウンの広場を、住民と塗り替える

本社のある街を「キャンバス」にする

クリエイティブツールを提供するAdobeは、本社を構える米・サンノゼのダウンタウンで、地元アーティストやNPOとともに大規模なミューラルプロジェクトを行っています。

サンノゼ・サンペドロスクエアの巨大グラウンドミューラル Image credit: Sagar Pathak.

広場や通りの路面を大胆に塗り替え、地域の人々が集う場所そのものをアップデートする取り組みです。

制作には、地元のアーティストに加えて、住民やボランティアも数多く参加します。

一日だけのイベントで終わらず、「この場所を一緒につくった」という記憶が、街と企業に対する親近感として残っていきます。

クリエイティブ企業らしい社会との関わり方

Adobeの活動は、自社のサービスを直接宣伝するものではありません。

むしろ、「創造する力は、企業の中だけで完結させない」というメッセージを、街のミューラルアートによって静かに伝えています。

オフィスの外に出て、ホームタウンの公共空間に投資することで、社員にとっても「この街で働いている意味」が具体的になります。

テック企業やスタートアップにとっても、地域との関係性を考えるうえで参考になるアートの使い方です。


BMW|走るキャンバスとしての「BMW Art Car」

半世紀続く「アートカー」という物語

BMWが1970年代から続けている「BMW Art Car」プロジェクトは、レーシングカーや市販車をキャンバスに、世界的アーティストが自由にペイントする取り組みです。

車体そのものが作品となり、サーキットや美術館を舞台に、モビリティとアートが交差する風景をつくり出してきました。

アンディーウォーホールとコラボしたアートカー

アンディーウォーホールとコラボしたART CAR

ジェフ・クーンズとコラボしたARTCAR

ジェフ・クーンズとコラボしたARTCAR

Andy WarholやRoy Lichtensteinなど、時代を代表するアーティストが参加していることもあり、アート史の中でも言及されることの多いシリーズとなっています。

近年は世界各地を巡回するツアーも行われ、車という“動くミューラル”が、国や世代を超えて鑑賞されています。

プロダクトを「ひらかれたキャンバス」にする

BMW Art Carは、短期的な販促キャンペーンではなく、数十年単位で続く文化プロジェクトです。

自社の象徴である車をアーティストに委ねることで、「技術とデザインの器」としてのブランドイメージを育ててきました。

企業がアートと組むとき、「製品をどこまで作品の一部として開くか」は大きな判断になります。

BMWの例は、ミューラルアートを含むアートプロジェクトを“長期の物語”として扱うことで、ブランドに深みを与える方法を示しています。


事例から見える、アートの影響力

7社の取り組みは、規模もジャンルもバラバラですが、共通している点がいくつかあります。

ひとつは、長期を見据えてアートが設計されていることです。

丸の内ストリートギャラリーや山手線のプロジェクト、西武鉄道の駅ミューラルは、入れ替えや更新を前提にしており、「導入して終わり」ではなく、「どう時間とともに変化させるか」が組み込まれています。

もうひとつは、装飾を届けるのではなく「共感」の輪を広げるアプローチであることです。

森ビルや三菱地所は都市の利用者全体に、JR東日本や西武鉄道は沿線住民や乗客に、NECやAdobeは社員と地域に、BMWは世界中のファンとアートコミュニティに、それぞれアプローチしています。


企業×アートのこれから

大きな再開発から、オフィスの一角のミューラルまで、アートとの距離感は企業ごとにさまざまです。

そのどれもが「アートで顧客との接点を豊かなものにする」という一点ではつながっています。小さくはじめたアートプロジェクトでも、数年後には街やブランドの印象そのものを支える“当たり前の風景”になっているかもしれません。

今回の7つの事例が、自社のどの場所ならアートが機能しそうかを考えるときの、ひとつの地図になればと思います。

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