記事の監修
NOMAL ART COMPANY代表 平山美聡 オフィスアート専門家。慶應義塾大学環境情報学部卒。株式会社資生堂にて営業・広報を歴任する傍ら趣味で興じていたアートやアーティストを取り巻く環境に課題感を持ち、アート通販事業WASABIとBtoBオフィスミューラルアート事業を立ち上げ、現在では300人以上のアーティストコネクションを活かし100社以上のオフィスや公共施設へアートを導入。
オフィスにアートや絵画を飾る企業は、この10年で確実に増えてきました。
その一方で、「どうせなら風水も取り入れて運気を上げたい」「あまりスピリチュアルになりすぎるのは避けたい」という声が、同時に聞こえてくるのも現場のリアルです。
本記事では、10年以上オフィスへのアート導入や施工を手がけてきたNOMAL ART COMPANYの独自視点から、風水を“ほどよく”取り入れる具体的な方法をまとめました。
目次
もともと風水は、環境と人との関係性を整えるための考え方であり、「従わないと悪いことが起きる」という種類のものではありません。
オフィスにアートや絵画を導入するときは、「入口は明るいモチーフ」「人が向き合う場では落ち着いた色」といった一般的なインテリアの考え方に、風水の視点を少し足す程度がちょうどよいバランスです。
風水を理由に大きな改装や大量の買い替えをするよりも、「どうせなら気持ちよく働ける配置にしたい」という温度感で考えるほうが、社内でも共有しやすく、おすすめです。
風水では、北は蓄財や安定、西は楽しさや金運、東はスタートや成長、南は評判や発信といったイメージで語られることが多く、オフィスのゾーニングでも参考になります。
例えば、会社のエントランスが東側にあるなら「新しい出会いやスタート」を感じさせるアートを選び、南側の会議室には発信にまつわる「ブランド」を象徴する絵画を飾る、といった使い方です。
とはいえ、ビルの構造やテナントの条件によっては、理想的な方角に特定の部屋をつくれないことも普通にあります。
その場合は、「この方角だから必ずこうしなければならない」と考えすぎず、使えるところだけを目安として取り入れるくらいが、アートのレイアウトと風水のバランスとしてちょうど良いといえます。
風水でよく語られる色のイメージを押さえておくと、アートや絵画の選定に応用しやすくなります。
青や緑は落ち着きや調和、赤やオレンジは活気や行動力、黄色や金は明るさや豊かさをイメージさせる色として扱われることが多く、これらを既存インテリアの色と重ねて考えると、選ぶ理由を説明しやすくなります。

モチーフについては、山や森などの安定感のある風景、水辺や空を描いた絵画、抽象的な色彩作品、植物や静物をテーマにしたアートなどが、ビジネス空間では使いやすく、風水的にも扱いやすい題材とされます。
逆に、暴力や破壊、血を連想させる表現、特定の宗教性や政治性が強すぎるアートは、風水以前に企業空間として適切かどうかを慎重に見極める必要があります。
入口や受付は、オフィスに入った人が最初に目にする場所であり、アートや絵画が会社の第一印象をつくります。
・ポイント1:受付カウンターの背面には、会社の理念や事業とつながる前向きなモチーフの絵画を1〜2点、大きめのサイズで配置する。
・ポイント2:入口から正面に見える壁には、暗く沈んだ色や閉塞感のあるアートは避け、ほどよく余白のある構図や明るい色調を選ぶ。
・ポイント3:観葉植物やサインとアートの距離を取り、人の通行を妨げない範囲で「立ち止まって眺められる余白」を確保する。
ここでは、風水で言われる「気の入り口」という考え方をヒントにしつつ、「初めて来た人がどう感じるか」という視点を最優先に、アートと絵画を配置すると良いでしょう。
会議室や応接室は、社内外の対話が生まれる場所であり、アートや絵画の選び方が会話のしやすさや場の空気に影響します。
・ポイント4:商談や重要な協議に使う応接室では、色数を絞った落ち着いた絵画を選びます。

・ポイント5:社内のブレスト用スペースでは、抽象的なアートや動きのある構図を1面に取り入れ、発想を切り替えやすい雰囲気をつくる。

・ポイント6:参加者の真正面に強い視線を感じる人物モチーフなどは避け、座席配置とアートの位置をセットで検討し、視線が窓や壁の余白にも逃げるようにする。

会議室のレイアウトでは、風水の「落ち着き」「調和」というキーワードをヒントにしながらも、実際に対話しやすい状態になっているかを基準に、アートを選ぶのがおすすめです。
執務エリアやフリースペースは、社員が日々長い時間を過ごす場所であり、アートの配置が働きやすさや気分に直結します。
・ポイント7:集中が必要なデスクエリアでは、視界の端に入る程度の位置に、小ぶりで落ち着いたトーンの絵画を点在させ、情報量を増やしすぎない。

・ポイント8:リラックススペースやカフェコーナーには、緑や水辺などのモチーフのアートをまとめて配置し、休憩中に視線を預けられる場所をつくる。

・ポイント9:部署ごとにテーマカラーやモチーフを少し変えることで、フロア全体の統一感を保ちつつ、チームの雰囲気を自然に切り替える。
風水で言われる「木」「水」の要素を意識しながら、社員の目の疲れやストレスを和らげるレイアウトを意識すると、アートと絵画が“空気のように効いてくる”状態を作りやすくなります。
通路やバックヤードは、機能面が優先されることが多く、何も飾られていないことも少なくありません。
・ポイント10:長い通路には、ダイナミックな構図の壁画や連作の絵画やシリーズもののアートを一定間隔で並べ、歩きながら自然に視線が流れるようにする。

・ポイント11:社員通用口や更衣室前の壁には、軽やかな色調やユーモアのあるモチーフを選び、出入りのたびに気持ちが少し切り替わるようにする。

・ポイント12:倉庫やバックヤードに眠っている社内コレクションがあれば、状態の良いものから試験的に通路やサブエリアに再配置し、「死蔵アート」をできるだけ減らす工夫を凝らしましょう。
動線まわりのレイアウトでは、風水で言う「気の流れ」を意識しつつ、社員の移動や気分転換のタイミングに小さな変化を差し込むイメージで、アートや絵画を配置すると効果を感じやすくなります。
オフィスで扱いやすく、風水的にも無理がないと言われる絵画モチーフには、山や森などの安定感のある風景、水辺や空を描いた作品、抽象表現、植物や静物をテーマにしたアートなどがあります。

これらは見る人の解釈に幅があり、宗教的・政治的な意味合いが強くないため、来客を含む多様なステークホルダーが出入りする企業空間でも安心して使いやすい題材です。
一方で、暴力的なシーンや破壊表現、血や怪我を強くイメージさせるモチーフ、特定の宗教性が全面に出ているアートは、風水以前にビジネスの場として適切かどうかを慎重に判断する必要があります。
アートや絵画の選定にあたっては、風水の吉凶よりも先に、「この会社の価値観やブランドと整合しているか」「社員や来訪者が安心していられるか」を基準にすることが重要です。
色は、既存のオフィスインテリアとの調和を前提に考えながら、風水で言われるイメージをさりげなく取り入れると、説得力のある選定理由になります。
例えば、白やグレーを基調としたオフィスでは、アクセントとして青や緑のアートを加えると落ち着きを感じやすくなり、受付や来客エリアでは少量の赤やオレンジを差し色として使うことで、適度な華やかさを演出できます。
サイズの目安としては、壁面の幅の2〜3分の1程度の横幅を持つ絵画をメインとし、大きすぎて圧迫感が出ないよう注意しながら、各ゾーンに1〜3点に絞ると、風水的にも「乱雑さ」を避けるレイアウトになります。
枚数を増やしたい場合は、小さめの絵画を均等な間隔で並べてシリーズ感を出すなど、リズムのある配置を意識すると、視覚的にも落ち着いたバランスになりやすくなります。
歴史のある会社ほど、社長室の風景画や創業記念で贈られた絵画、過去の記念事業で購入したアートなど、「なんとなくそのまま」になっている作品が社内のあちこちに眠っていることが少なくありません。
アートや絵画を風水の観点から見直すときも、まずはこれらの既存コレクションを「資産」として棚卸しし、どのモチーフをどのエリアに移せるかを整理するところから始めると良いでしょう。
倉庫やサブスペースに置かれている作品を受付や会議室、フリースペースへ移動するだけでも、オフィス全体の印象や“気の流れ”は大きく変わりますし、「新しく買う前に今あるものを活かす」という提案は、経営側にも受け入れられやすい考え方です。
アート 絵画 風水を組み合わせて考える際には、「買い替え」よりも「位置や組み合わせを変える」という発想からスタートすることで、費用対効果の高いリレイアウトが実現しやすくなります。
「南側に会議室がない」「入口がビルの構造上どうしても北向きになる」といったケースでは、風水の本に書かれている理想的なレイアウトをそのまま当てはめることはできません。
そのようなときは、方角の「意味」に近い役割を持つ別の場所で補う、という考え方が現実的です。
例えば、「発信」を司るとされる南側に会議室がない場合でも、会社のメッセージを伝えたい受付やプレゼンルームの壁面に、印象的なアートや絵画を配置することで、そのテーマを空間に反映させることができます。
アートや風水は、現実の制約を無視してまで優先するものではなく、「今ある条件を少し良くするための工夫」として使えば十分です。
オフィスにアートや絵画を導入するとき、風水の知識はレイアウトを考えるうえでの良いヒントになりますが、それ自体が目的になってしまうと、現場の負担やコストが大きくなりやすくなります。
本記事で紹介したように、入口・会議室・執務エリア・動線それぞれの12のポイントを意識しつつ、「まずは今ある絵画の位置や組み合わせを変えてみる」というリレイアウトから始めれば、小さなコストで印象の変化を体感しやすくなります。
アート 絵画 風水の三つを組み合わせて考える際に大切なのは、「運気が上がるかどうか」だけではなく、「働く人の気持ちが少し軽くなり、訪れる人にとっても心地よい空間になっているか」という視点です。
続けられる運用の範囲で、少しずつ配置を見直しながら、自社らしいオフィスアートのあり方を育てていくことが、結果として長期的なブランド価値や職場環境の向上につながっていきます。