話題の建築家に聞いた感性やセンスが磨かれる瞬間【アート思考探求マガジンvol.1】
2024.04.26
- #Hello Art Thinking
- #連続インタビュー
- #アート思考
アート思考マガジン
「ヨヨギノイエ」というInstagramアカウントを運営している建築家の日高 海渡さん。swarm(スウォーム)という設計事務所の代表であり、住宅のリノベーション、レストランなどの商業施設の内装設計、複合施設の企画などを行っている。ヨヨギノイエは白い壁やコンクリートの壁で構成されたシンプルな部屋に多国籍な民芸品が配置されている。さまざまな文化が混ざっているのに不思議と調和されている心が落ち着く空間だ。日高さんが考えるアート思考や、その考えが建築家の仕事にどう生かされているかを聞いた。
日高:swarmという設計事務所の代表をしています。主に住宅のリノベーション、レストランや美容室などの商業施設の内装設計、複合施設の企画などを行っています。
平山:池尻大橋にある大橋会館のリニューアルも手がけられたんですよね。シンプルな内装に、アクセントやファニーな要素があるのが面白いと思いました。建築や内装デザインをする上で、どんなことを大事にしていますか?
日高:swarmは鳥などの動物たちがつくる「無形の群れ」という意味があります。個人で活動している社外のデザイナーや建築家とプロジェクトごとにチームを構成していて、さまざまな価値観が混ざりあうチームであることが特徴です。
設計者には得手不得手があります。リノベーションが得意な人もいれば、新築でゼロからつくるのが得意な人もいる。それぞれの発想力や想像力も違うので、適材適所でメンバーをアサインしています。
平山:ヨヨギノイエは、日高さんの感性に従って好きなものを集めていると思うんですが、仕事にも影響があったりしますか?
日高:ヨヨギノイエの家づくりで得た感覚は、仕事にもつながっていますね。この部屋にはさまざまな国のものがあって文化が混ざっています。統一感はないけど素敵な空間にしたいなと思っていて、その考えは設計にも影響を与えています。swarmはさまざまな人と一緒に設計をするので、自分の考えだけで思考を閉じてしまうと、別の設計者と一緒に設計するときにうまくいかないんです。
平山:プロジェクトによっては、設計者が2人いることもあるんですね。
日高:大橋会館の場合は、私が全体のディレクションをしていて、エリアごとに設計者が違うんです。一つの施設をつくりあげるのに大事なことは、みんなの価値観をひとつにするのではなく、他の人が作る空間に対して寛容さとリスペクトをもつことが大事だと思っています。
平山:日高さんは、ご自身をアーティストだと思いますか?
日高:自分でアーティストと名乗ることはないですが、誰かに言われてイヤな気はしないです。複数人でのプロジェクトではディレクターのような役割もしていますし、仕事は企画と最後の仕上げが好きで、途中の図面を書く段階が実はしんどいです(笑)「建築家です」と名乗ると、設計だけする人と役割が限定されてしまう気がしていて、肩書きに縛られたくないなと思っています。
日高:きっかけは2つあったと思います。1つめは0〜3歳のときにパキスタンに住んでいたことです。その影響で、実家にはパキスタンで買った謎のオブジェのような民芸品が多かったんです。子供心にも「ちょっと変だな」と思うものが置いてある家でした。
僕が大人になってヨヨギノイエで部屋づくりをするときに、実家から引き継いだオブジェがいくつかあったんです。そこで、「こいつらがどうやったらかっこよく見えるかな?」と考えはじめました。
2つめは海外旅行でスペインを旅行したときの体験です。スペインの田舎町に行ったんです。絵にかいたような最高のビーチ沿いを散歩していました。とても気候がよく、太陽がジリジリと暑い日でものすごく汗をかいたんです。汗が体を伝っていき、気持ちいい風が肌にあたったときに、「ああ、ここに自分の肌があるんだ」と初めて自分の輪郭を自覚したんです。スペインの海岸線と一体化しているような気持ちになりました。そこから、とても感覚派の人間になりました(笑)
平山:え!そうなんですね(笑)
日高:その頃から「窓辺から気持ちいい日光が入るから、ここに昼寝スペースをつくろう」という感性的な発想をするようになりました。それまでは、建築や空間は全体性があって部屋が構成されていると言語的に捉えていたんです。スペインで身体的な体験をしてから、自分の感性が変わった気がします。
平山:感覚に身を任せた、初めての瞬間だったんですね。
日高:それまでは「なぜ自分が今楽しいんだろう」みたいなことは考えたことがなかったんですよね。スペインの田舎町についても「きっときれいな海岸線があって、建築物にはこんな特徴があるんだろうな」と冷静に思っていました。でも、自分が体験してみたら、言語での理解をこえていて「風にふかれたらこんなに気持ちいいんだ…!」と思ったんです。
すごく当たり前のことで、感じ取れる感性は誰しもあるはずなんですけど、ふだん生活していると気づかなかったりしませんか?旅行していて「楽しむぞ!」という感覚だったからこそ気づけたのかもしれませんね。
平山:まさに今のお話が今回お聞きしたかったお話です!日高さんがスペインで感じたのは「自分だけがもつ感覚・視点と出会った瞬間」ですよね。私は自分だけの視点を見つけることがその人のアート思考の原点になるのではと考えているので、とても興味深いです。
日高:ちょっとやばい人かもと思いませんでした(笑)? 平山:すごい角度からきたなと思いました(笑)
汗をかいて海岸を歩いていて風にふかれるのは、100人いたら100人が気持ちいいと感じるシチュエーションです。でも、「なぜ気持ちいいと自覚したか?」とまでは考えないと思うんです。日高さんは直感を分析できるから、感性をビジネスに生かせるのかもしれないですね。感性派になってから、建築家としてのアウトプットも変わりましたか?
日高:変わりましたね。大学生の頃はちょっと頭でっかちなタイプだったんです。本や図面を読み込んで、とにかく建築の知識を叩き込むような感じでした。
今、僕は建築には理性と感覚の両面が必要だなと思っているんです。建築は工学的な建築物をつくるので、建物の大きさから部屋をどう分割し、それぞれにどんな機能をもたせるのかなどを俯瞰的に考える必要があります。一方で大事にしたいのは、建築物の中にいてどんな気持ちになるのか、どんな生活を送れるのかを考えること。それが設計する上で一番面白いと思っています。
例えば、窓を機能的に捉えれば、ガラスがあって周りに枠があって開閉するもの。一方で、窓を開けば風が入ってくる、光が落ちてくる場所と考えるとまた違った見方ができます。「この窓をフレンドリーな存在にするなら、植物などのキャラクターが必要だよね」と人と違う発想したりもできる。
そんな風に部屋の一角をユニットで考えて、空間づくりをしています。建築家として、誰かの輪郭をなぞれるような空間づくりをしたいなと思っています。
日高:「街を歩いたら自分の感性が何かとぶつかるかもしれない」と思って外出してみるのもいいと思います。何も意識せずに生活していると、道でアートを見かけても素通りしてしまうかもしれない。でも意識して歩いていると、パブリックアートが目に入ってきたりするんですよね。
平山:日高さん自身が日常的に行っている、理性から感性にスイッチを入れるための行動はありますか?
日高:いいと思ったものに触れることとアウトプットすることです。建築とはまた違うクリエイティブに触れるのが大事で、食事の時に感動することが多いですね。器と料理の配色の美しさに感動して、その組み合わせを建築の仕事のときに使うこともあります。すると、自分が気づかなかった自分の好みや新しい表現につながったりします。
そして、素敵だと思うものは眺めるだけではなく、家に持って帰って使うのが大事かなと思っています。例えばお皿だったら、触れてみたり良さを言葉にしてみたり、料理を盛りつけたりして、生活でどうやったら輝くか考えてみる。そのくらいまでアウトプットすると、自分のセンスとして引き出しに入る気がします。
平山:クリエイティブな職種以外の人でも取り入れられそうですね。
日高:レストランじゃなくて定食屋でもいいと思うんです。おいしいと思った料理を自分で料理してみるとわかることがあります。「なぜ自分の家で見るとチャーハンがおいしくなさそうに見えるのか?」お店で見たチャーハンと盛り付け方が違うのか、それとも照明が明るすぎるのか。そんなことを考えるだけでも意外とトレーニングになると思います。
平山:私自身アート事業を運営していると、一般の方のアートに対するイメージがここ数年少し変わってきたと感じているのですが、日高さんはいかがですか?
日高:アートに興味をもつ方が増えていますね。住宅やホテルを設計するときに「こんなアートを飾りたい、民芸品を置きたい」と言われることが増えました。その人の好みのアートがわかると、どんな空間づくりをするかというディスカッションの種になってくれるので、僕としてはうれしいですね。自分の好きなアートについては、みなさん自由に言語化できますから。
平山:「こういうものが好きなのか」と依頼主がクリアになる感じなんですね。センスを磨くのは難しいと思っている人が多いと思うんです。日高さんがアートや工芸品を購入するときは、空間から逆算して「こんなものが必要だな」と思って購入しますか?
日高:意外とそうでもないんです(笑)深く考えずに「素敵だな」と思うものを購入しています。持って帰ってきてから「家のどこに置けば、こいつが輝くかな」と考えて配置を決めています。「こいつはこの置物とちょっと似ているから、一緒に置いてみよう」とモノの居場所をつくっていく。少しずつボトムアップ式に空間が生まれていきます。
平山:この部屋にあるモノたちは直感的に購入されていても、世界観がありますよね。この対談を通して、日高さんが建築家として、機能美と感覚美を行き来できる理由が少しわかった気がしました。ありがとうございました!
企画・編集/野本いづみ
目次
アート思考探求マガジン「Hello ART Thinking!」
アート思考を紐解くインタビュー企画アート思考とは何か?を知りたい方はこちらもご覧ください
第一線で活躍する経営者やクリエイターは、アーティストにも似た感受性や視点が備わっているようにみえる。一体なぜ?マガジンでは、彼らの物事の捉え方や感受性を育むまでに至ったパーソナルな体験を対話によって紐解き、アート思考を再定義します。インタビュワーはオフィスアートを運営するNOMALARTCOMPANY代表の平山美聡。 vol.1の今回は建築家日高海渡さんへのロングインタビュー。アーカイブはこちら
他の人がつくる空間に、寛容さとリスペクトをもつことを大事にしている
平山:こんにちは。Instagramで拝見してから「ヨヨギノイエ」に来るのを楽しみにしていました。改めて、日高さんのお仕事について教えていただけますか?日高:swarmという設計事務所の代表をしています。主に住宅のリノベーション、レストランや美容室などの商業施設の内装設計、複合施設の企画などを行っています。
平山:池尻大橋にある大橋会館のリニューアルも手がけられたんですよね。シンプルな内装に、アクセントやファニーな要素があるのが面白いと思いました。建築や内装デザインをする上で、どんなことを大事にしていますか?
日高:swarmは鳥などの動物たちがつくる「無形の群れ」という意味があります。個人で活動している社外のデザイナーや建築家とプロジェクトごとにチームを構成していて、さまざまな価値観が混ざりあうチームであることが特徴です。
設計者には得手不得手があります。リノベーションが得意な人もいれば、新築でゼロからつくるのが得意な人もいる。それぞれの発想力や想像力も違うので、適材適所でメンバーをアサインしています。
平山:ヨヨギノイエは、日高さんの感性に従って好きなものを集めていると思うんですが、仕事にも影響があったりしますか?
日高:ヨヨギノイエの家づくりで得た感覚は、仕事にもつながっていますね。この部屋にはさまざまな国のものがあって文化が混ざっています。統一感はないけど素敵な空間にしたいなと思っていて、その考えは設計にも影響を与えています。swarmはさまざまな人と一緒に設計をするので、自分の考えだけで思考を閉じてしまうと、別の設計者と一緒に設計するときにうまくいかないんです。
平山:プロジェクトによっては、設計者が2人いることもあるんですね。
日高:大橋会館の場合は、私が全体のディレクションをしていて、エリアごとに設計者が違うんです。一つの施設をつくりあげるのに大事なことは、みんなの価値観をひとつにするのではなく、他の人が作る空間に対して寛容さとリスペクトをもつことが大事だと思っています。
平山:日高さんは、ご自身をアーティストだと思いますか?
日高:自分でアーティストと名乗ることはないですが、誰かに言われてイヤな気はしないです。複数人でのプロジェクトではディレクターのような役割もしていますし、仕事は企画と最後の仕上げが好きで、途中の図面を書く段階が実はしんどいです(笑)「建築家です」と名乗ると、設計だけする人と役割が限定されてしまう気がしていて、肩書きに縛られたくないなと思っています。
幼少期に異国で育った経験と、スペインでの一人旅が感性の根源にある
平山:建築家でありインフルエンサーでもある方はなかなかいないですよね。圧倒的なセンスの良さを感じるのですが、どのようにセンスを磨いてきたんですか?日高:きっかけは2つあったと思います。1つめは0〜3歳のときにパキスタンに住んでいたことです。その影響で、実家にはパキスタンで買った謎のオブジェのような民芸品が多かったんです。子供心にも「ちょっと変だな」と思うものが置いてある家でした。
僕が大人になってヨヨギノイエで部屋づくりをするときに、実家から引き継いだオブジェがいくつかあったんです。そこで、「こいつらがどうやったらかっこよく見えるかな?」と考えはじめました。
2つめは海外旅行でスペインを旅行したときの体験です。スペインの田舎町に行ったんです。絵にかいたような最高のビーチ沿いを散歩していました。とても気候がよく、太陽がジリジリと暑い日でものすごく汗をかいたんです。汗が体を伝っていき、気持ちいい風が肌にあたったときに、「ああ、ここに自分の肌があるんだ」と初めて自分の輪郭を自覚したんです。スペインの海岸線と一体化しているような気持ちになりました。そこから、とても感覚派の人間になりました(笑)
平山:え!そうなんですね(笑)
日高:その頃から「窓辺から気持ちいい日光が入るから、ここに昼寝スペースをつくろう」という感性的な発想をするようになりました。それまでは、建築や空間は全体性があって部屋が構成されていると言語的に捉えていたんです。スペインで身体的な体験をしてから、自分の感性が変わった気がします。
平山:感覚に身を任せた、初めての瞬間だったんですね。
日高:それまでは「なぜ自分が今楽しいんだろう」みたいなことは考えたことがなかったんですよね。スペインの田舎町についても「きっときれいな海岸線があって、建築物にはこんな特徴があるんだろうな」と冷静に思っていました。でも、自分が体験してみたら、言語での理解をこえていて「風にふかれたらこんなに気持ちいいんだ…!」と思ったんです。
すごく当たり前のことで、感じ取れる感性は誰しもあるはずなんですけど、ふだん生活していると気づかなかったりしませんか?旅行していて「楽しむぞ!」という感覚だったからこそ気づけたのかもしれませんね。
平山:まさに今のお話が今回お聞きしたかったお話です!日高さんがスペインで感じたのは「自分だけがもつ感覚・視点と出会った瞬間」ですよね。私は自分だけの視点を見つけることがその人のアート思考の原点になるのではと考えているので、とても興味深いです。
日高:ちょっとやばい人かもと思いませんでした(笑)? 平山:すごい角度からきたなと思いました(笑)
汗をかいて海岸を歩いていて風にふかれるのは、100人いたら100人が気持ちいいと感じるシチュエーションです。でも、「なぜ気持ちいいと自覚したか?」とまでは考えないと思うんです。日高さんは直感を分析できるから、感性をビジネスに生かせるのかもしれないですね。感性派になってから、建築家としてのアウトプットも変わりましたか?
日高:変わりましたね。大学生の頃はちょっと頭でっかちなタイプだったんです。本や図面を読み込んで、とにかく建築の知識を叩き込むような感じでした。
今、僕は建築には理性と感覚の両面が必要だなと思っているんです。建築は工学的な建築物をつくるので、建物の大きさから部屋をどう分割し、それぞれにどんな機能をもたせるのかなどを俯瞰的に考える必要があります。一方で大事にしたいのは、建築物の中にいてどんな気持ちになるのか、どんな生活を送れるのかを考えること。それが設計する上で一番面白いと思っています。
例えば、窓を機能的に捉えれば、ガラスがあって周りに枠があって開閉するもの。一方で、窓を開けば風が入ってくる、光が落ちてくる場所と考えるとまた違った見方ができます。「この窓をフレンドリーな存在にするなら、植物などのキャラクターが必要だよね」と人と違う発想したりもできる。
そんな風に部屋の一角をユニットで考えて、空間づくりをしています。建築家として、誰かの輪郭をなぞれるような空間づくりをしたいなと思っています。
アート思考を気軽に取り入れるなら街歩きとレストラン巡り
平山:アートに関わる人は幼少期にアートと出会っている人が多い印象ですが、日高さんはバリバリ理系の東工大を卒業後に感覚派になっているので、ビジネスパーソンにも再現性がありそうです。一人旅や非日常の中で五感が研ぎ澄まされ、自分の中に眠っていた感覚が目覚める方は多いのかなと思います。ビジネスパーソンがアート思考を取り入れるのにおすすめな方法はありますか?日高:「街を歩いたら自分の感性が何かとぶつかるかもしれない」と思って外出してみるのもいいと思います。何も意識せずに生活していると、道でアートを見かけても素通りしてしまうかもしれない。でも意識して歩いていると、パブリックアートが目に入ってきたりするんですよね。
平山:日高さん自身が日常的に行っている、理性から感性にスイッチを入れるための行動はありますか?
日高:いいと思ったものに触れることとアウトプットすることです。建築とはまた違うクリエイティブに触れるのが大事で、食事の時に感動することが多いですね。器と料理の配色の美しさに感動して、その組み合わせを建築の仕事のときに使うこともあります。すると、自分が気づかなかった自分の好みや新しい表現につながったりします。
そして、素敵だと思うものは眺めるだけではなく、家に持って帰って使うのが大事かなと思っています。例えばお皿だったら、触れてみたり良さを言葉にしてみたり、料理を盛りつけたりして、生活でどうやったら輝くか考えてみる。そのくらいまでアウトプットすると、自分のセンスとして引き出しに入る気がします。
平山:クリエイティブな職種以外の人でも取り入れられそうですね。
日高:レストランじゃなくて定食屋でもいいと思うんです。おいしいと思った料理を自分で料理してみるとわかることがあります。「なぜ自分の家で見るとチャーハンがおいしくなさそうに見えるのか?」お店で見たチャーハンと盛り付け方が違うのか、それとも照明が明るすぎるのか。そんなことを考えるだけでも意外とトレーニングになると思います。
平山:私自身アート事業を運営していると、一般の方のアートに対するイメージがここ数年少し変わってきたと感じているのですが、日高さんはいかがですか?
日高:アートに興味をもつ方が増えていますね。住宅やホテルを設計するときに「こんなアートを飾りたい、民芸品を置きたい」と言われることが増えました。その人の好みのアートがわかると、どんな空間づくりをするかというディスカッションの種になってくれるので、僕としてはうれしいですね。自分の好きなアートについては、みなさん自由に言語化できますから。
平山:「こういうものが好きなのか」と依頼主がクリアになる感じなんですね。センスを磨くのは難しいと思っている人が多いと思うんです。日高さんがアートや工芸品を購入するときは、空間から逆算して「こんなものが必要だな」と思って購入しますか?
日高:意外とそうでもないんです(笑)深く考えずに「素敵だな」と思うものを購入しています。持って帰ってきてから「家のどこに置けば、こいつが輝くかな」と考えて配置を決めています。「こいつはこの置物とちょっと似ているから、一緒に置いてみよう」とモノの居場所をつくっていく。少しずつボトムアップ式に空間が生まれていきます。
平山:この部屋にあるモノたちは直感的に購入されていても、世界観がありますよね。この対談を通して、日高さんが建築家として、機能美と感覚美を行き来できる理由が少しわかった気がしました。ありがとうございました!
日高さんのアート思考探求を終えて
今回、理系建築家ならではのアート思考を探求することができました。建築家は理系の頭を持ちながら造形美や人の中に宿る感覚をデザインする、まさに機能と感覚を行き来する職業。日高さんがおすすめしていた旅やレストランめぐりから感性を刺激するというやり方は忙しいビジネスパーソンも取り入れやすそうなので、私もぜひ取り入れてみたいです。
本日のゲスト swarm代表/建築家 日高海渡
1988年東京都生まれ。東京工業大学大学院建築学専攻修了。アトリエ・ワン勤務後、独立し日高海渡建築設計を設立。同時に東京工業大学大学院塚本研究室博士課程在籍。個人で活動しながら株式会社ツクルバにてパートナーデザイナーとして空間設計を複数担当。その後、戸井田哲郎とHaT architectsを共同設立、複数の空間設計のプロジェクトを手がける。事業拡大に伴い、2019年5月に株式会社swarmを創業。
日高海渡さんのSNSー X / 「ヨヨギノイエ」instagram /
アート思考探求マガジン「Hello ART Thinking!」
文/久保佳那,写真/久保佳那企画・編集/野本いづみ
Hello ART thinking!次回予告
組織・人材開発コンサルティング会社HRインステテュートの取締役シニアコンサルタント狩野尚史氏へ「組織にアート思考は必要か?」を問いかける濃密な対談です。お楽しみに。アーカイブはこちら
オフィスへのアート導入お問い合わせ・相談はこちらから
気になる費用や工期について
お気軽にお問い合わせください。
お気軽にお問い合わせください。