アート思考とは?イノベーションを生む思考法のトレーニングやデザイン思考との違いを解説
2024.05.16

ART×BUSINESS
目次
アート思考とは何か
「 アート思考 」。最近この言葉をよく聞く、という方も多いのではないでしょうか。 「デザイン思考」の次に出てきた概念で「アーティスト的な思考回路」のことが「アート思考」ーーーそう言われても、どう役に立つのか不明確ですよね。 ここではアート事業を自ら立ち上げ、現在多数の企業に向けてアート思考ワークショップを実施している著者の平山が、「何故流行っているのか」「デザイン思考とは何が違うのか」「ビジネスにどう生かすのか」「トレーニング法は」など、ひと通りわかるように解説していきます。
アート思考 とはゼロイチを産む思考法
それでは、早速ですが「アート思考」とは何でしょうか。 「アーティストが作品作りの際に用いる思考法」であり、噛み砕いて言うと「自分目線で自由に発想する」ことがアート思考です。 「アート思考」は、「イノベーションを産むもの」や「ビジネスの役に立つ」などと言われますが、もともとは子供から大人まで誰もが持っているような「好き・嫌い」というシンプルな思考がベースになっています。 それでは、このある意味自分勝手な思考法が、なぜビジネスで話題になっているのでしょうか? 具体的なビジネスへの活かし方を説明する前に、なぜアート思考が今流行っているか、デザイン思考と比較しながら考えてみましょう。アート思考が何故流行っているのか?デザイン思考との比較
デザイン思考は「他者目線」、アート思考は「自分目線」
まず「デザイン思考」について触れておきましょう。 デザイン思考とは「課題の本質を見つけて、それに対する解決策をユーザー視点で導き出すこと」。多数のフレームワークがありますが、フレームワークの多くは、「ユーザー起点」で物事が進みます。 まずユーザーにとっての現場の課題をできるだけ多く抽出し、その中から課題の本質を見つけて、解決策をディスカッションしていきます。
デザイン思考がイノベーションを生みづらい理由
デザイン思考ではイノベーションを生みづらい理由は大きく分けて3つあります。 1つ目は、チームで解決策を探ると最終的なアウトプットが平均をとったものになりがちだから。多数派に流されて、突飛なアイディアは潰れてしまいがち。尖ったアイディアも丸く研磨されてしまいます。
3つ目は、ユーザーの課題起点の解決策は、同業他社が同じところにたどり着いている可能性が高いから。つまり、ライバルが多く、価格競争などに巻き込まれてしまう可能性が高くなります。 認知心理学の第一人者であるドナルド・ドーマンは、イノベーションについて調査した中で「急進的なイノベーションで、社会のニーズの解析をベースにされていたものはひとつもない」という言葉を残しています。 つまり、イノベーションはユーザーの分析を起点とする「デザイン思考」からは生み出されていないことがわかります。
アート思考が活きた、3つのイノベーションの例
それではここから具体的な例を挙げて、アート思考が活きたと推測されるイノベーション事例をお話しします。ここではイノベーションを生み出すためのある法則を導き出すことができます。それでは、事例からお話ししましょう。①Apple社のiPhone

②SONYのウォークマン
当時の盛田会長が推し進めた「ウォークマン」の開発。きっかけは実はとてもパーソナルなもので、当時の名誉会長であった井深大が、旅客機内で綺麗な音で音楽が聴けるデバイスを作ってほしいと、事業部長であった大曾根部長に依頼したところから始まったそう。 当時録音機能が必要とされていた世の中で、「ただ音楽を持ち歩ける」ことに機能を特化させたウォークマンは、周囲から売れないとされていたといいます。 順風満帆ではなかったであろうウォークマンの開発中に、当時のテープレコーダー部の大曾根部長はこういった、とSONYのサイトには書かれています。 「冷静に検討を重ねると、難しい問題はいくらでも出てくる。だから検討する前に、『えいやっ』と返事をしなくちゃ話は始まらないよ」
出典:https://www.sony.com/ja/SonyInfo/CorporateInfo/History/SonyHistory/2-06.html この言葉は、チームで話し合わずに自分のパッションを大事にしなさい、と行っているようにも聞こえます。 スピード感を持って生み出されたウォークマンは、井深名誉会長だけではなく、日本中の人々の生活を豊かなものにしました。
③バルミューダ社のBALMUDA The Toaster
最後に、バルミューダ社の例をお話ししましょう。同社が開発したトースター・「BALMUDA The Toaster」は注水口が搭載し、そこに水を入れることでパンが中からふっくら焼き上がるというトースターです。
日々できる! アート思考のトレーニング方法とは
それでは、上記の先人のように私たちがアート思考をトレーニングし、発揮するには何が必要なのでしょうか。 アート思考はフレームワークのような方法論ではなく、日々を過ごす中で少しずつ培っていくものだと著者は思っています。 ここからは簡単なアート思考のトレーニング方法をお伝えします!本当に些細なことなので、ぜひ試してみてくださいね。①自分の過去で嫌だったことを振り返る
今まで人から言われて嫌だった言葉はありますか?イライラしたシチュエーションは? その中の裏返しに、主観の影が眠っていることが多いです。記憶に残る嫌だった言葉を思い返してみましょう。もちろん、記憶に残る嬉しかったことも「なぜ嬉しかったのか?」を再度深掘りしてみましょう。②好き・嫌いを自覚する
毎日忙しく仕事をしていると、自分の好き・嫌いは疎かになり、正しい・正しくないにとらわれがちです。ですが、日々の小さい「好き・嫌い」に敏感になってください。 「こちらの方が気持ちいいな」「こちらのほうがなんか好きだな」と直感的に選ぶ時が誰でも日々何回もあるはず。直感で選んだ後に「なぜ自分はこっちを選んだのだろう?」と選択の結果を俯瞰して見てみましょう。直感と論理を反復運動することで、主観はどんどん研ぎ澄まされたものになっていきます。 例えば赤と青のハンカチが目の前にあり、青のハンカチを何気なく選んだとき。「なぜ自分は青を選んだのだろう?」と理由を後から考えてみてください。些細な選択の中にも、大事な主観が潜んでいます。③余白をもち思うままに行動してみる

アート思考を組織で生かすには
それでは、アート思考を会社や組織で生かすにはどうしたら良いのでしょうか。 アート思考は「自分」起点だからこそ個人的なものに終始してしまい、ビジネスに転換しづらいというデメリットがあります。アート思考とデザイン思考をバランスよく発揮し、イノベーションを起こすためにはどういった環境が必要なのでしょうか。アート思考を発揮するための環境づくりとは
アート思考は、社長や経営者にとっては有用かもしれませんが、立場によっては発揮しづらい思考法だと思います。だからこそ、アート思考による直感的な発言がしやすい環境であることも大切です。
より良い人生につながる アート思考 の効能
長々と書いてしまいましたが、アート思考が少し身近に感じてもらえたら幸いです。 アート思考がアート思考と呼ばれるのは「他者ではなく自分目線で自由に発想する」を地でいくのがアーティストだからです。この場合の行動とは、アーティストにとっての作品作りに他なりません。 さて、アート思考はビジネスでイノベーションを生むだけのものではなく「よりよく生きる」ために大切な考え方でもあります。
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